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LIKE IT! HAIR CATALOG JP THE ERCOMMENDED

ペンとノートを通して自分の思いや考えと向き合う

Doubleのスタイリスト有間秀人さんが「LIKE IT!」スポットに選んだのは
東京・蔵前にある文具専門店、カキモリ。そこで今回は
「FACE to FACE」で文具を手渡すことを大切にするカキモリに
お伺いして、文具と「書く」という行為ついてお話を聞きました。

思いや考えが「手書き」という
行為で自分に刻まれていく

 ペンやノートにはこだわりがあって、気に入ったものが見つかるまで何年も時間を費やしたことがありました。特に手こずったのは、僕のところに来てくださったお客さまの情報を書くためのペンとノート。お客さまがいつ来られて、どのような施術をして、どのようなファッションだったのか? どんな気分だったのか? そんな僕が知り得たお客さまの大切な情報を預けるペンとノートは、僕の財産となるもの。だから納得するものに出会うまでに時間がかかりました。
 文具だけでなく、メガネや靴。実は、いろいろなことに密かにこだわりを持つ僕。そんな僕のところに「カキモリという素敵な文具店があるよ」と教えてくれた知人がいて、それからカキモリのことはずっと気になっていたのです。
 今回、カキモリで出迎えてくださったのはオーナーの広瀬さん。店内は、ひとつひとつの文具が手にとりやすく、またどれもが美しく見えるように陳列され、まるで文具に特化したセレクトショップのよう。百貨店でもなければ、スーパーやコンビニでもなく、そこでは文具が居心地よさそうにしていました。

大切な「書く」ことを支える文具だから「FACE to FACE」で手渡す

広瀬琢磨
カキモリオーナー

群馬で、祖父の代から続く文具店に生まれた三男。外資の医療機器メーカー勤務を経て、「楽しく書くお手伝いを」という原点の思いに立ち戻り、2010年に東京・蔵前に文具専門店「カキモリ」をオープン。

 今やボールペンを手に入れようと思えば、コンビニでも買えるし、1クリックするだけで翌日には届きます。町の文具店もずいぶん見かけなくなりました。そんな時代の中でカキモリを立ち上げたのはなぜですか?
「もともと路面店でお客さまに文具を売るという原点が僕の中にあったからかもしれません。いろいろなものがネットの便利さによって失われているのは事実だと思います。食料品も洋服も欲しいものはたいていのものがネットで実物を見ないで、実物を手にとらないで買うことができる。文具は、もしかしたらそのネットの波に飲み込まれるのが一番早かった分野かもしれません。そしてお店として残る文具店は、文具だけでは成り立たなくなり、雑貨屋さんになっています。でも僕は『書く』ことは、もっと何かほかに大切な力を持っていて、それを可能にする文具は、お客さまの顔を見て手から手へと渡したかったのです。『書く』ことを担う文具は、見ただけではそのよさを判断するのは難しいから」

 万年筆なら昔から専門店があるけれど、なんだか敷居が高い感じがします。カキモリは専門店でありながら、敷居が高く感じられません。
「手書きに憧れを持つ人は多いように感じますが、そういう人たちが万年筆専門店に足を運んでも、ショーケースにペンがおさめられていて『ちょっと開けて見せてもらえますか?』とは、お店の人になかなか言いにくいですよね。実際に手に持った感触を知りたかったり、書き味をいろいろ試してみたいけれど、値が張るものだと特に、お店の雰囲気がそうさせてくれない(苦笑)。僕にもそんな経験があるので、カキモリでは、ペンをすべてフルオープンの棚にのせて、パッと見やすく、手にとりやすいようにしています」
 外見が同じように見えても書き味が違ったり、逆に見た目は違うのに書き心地が似ていたり、ペンって手にとらないとわからないことがいっぱいありますよね。
「ペンは自分の手が実際に握って使うものだから、手触りやその人の手とのフィット感などは、とても大切だと思っています」

フィット感のいい文具が「書く」ことを楽しくしてくれる

 フィット感がいいかどうか?というのは、僕が考えるヘアスタイルと似ています。見た目がキレイかどうかも大切だけれど、その人とヘアスタイルがフィットしているかどうかもとても大切。文具も見た目だけでなく、使う人とフィットしているのがいいのでしょうね。 
「カキモリではペンも大切に考えていますが、ペンを使って書き記すためのノートも大切だと考えています。ここでは表紙や中の紙を選んでオーダーすれば、その場でオリジナルのノートがつくれるんですよ」
 自分で選んだ表紙や紙でつくられたノートだと愛着もわきますね。
「最初は種類も少なかったのですがお客さまから寄せられる声を参考に紙の種類などを増やしていった結果、今ではバリエーションが豊かになっています。カキモリのある東京の下町、台東区は昔から職人が多い町で、この周辺には紙の加工をしてくれる職人さんもいます。少ないロットでもいいものを手づくりできるのは、そんな職人さんがいるおかげ。IT化によって効率的に便利になっていくことは避けられないし、取り入れたらいい部分もあるけれど、効率化できない部分や効率化しないほうがいい部分は、大切に残していきたいと思っています」

 隣にインクスタンドをつくったのはどんな思いからだったのですか?
「均一に書けるペンもいいのですが、万年筆などの文具によってその文字に濃淡がつくと、なぜか気持ちが現れている感じがしませんか? カキモリはお客さまの声を聞きながら、少しずつ取り扱う品を増やしたり、提供するサービスを増やしていっているのですが、インクも自分でつくることができたらもっともっと自分らしい『書く』という時間が生まれるのでは?と思ったのです」
 実際につくらせていただくと、ちょっと青みがかっているのがいいなとか、もう少し深い色にしたいなと、自分らしい色を探すのが楽しくなります。
「文字の色というのも自分を表す大切なもののひとつだと思います」 そこもまた髪の毛と似ていますね。

自分のために、そして相手のために大切な「書く」ひととき

 最後に広瀬さんに「あなたと文具の関係は?」と尋ねると、「うーん、難しい」と苦笑い。
「『書く』ひとときは、自分の考えや思いを整理するための大事な時間。お客さまのこと、お店の経営、スタッフのこと……あれやこれやすることがいっぱいあって忙しくても、僕は週に1回はペンとノートを持ってカフェなどに行くようにしています。パソコンを前に作業をしていると気づかないうちに方向がずれていってしまうことがあったり、考えが途切れてしまうことがあるけれど、ノート1冊、ペン1本持ち歩くだけで、頭の中が整理できるから。それにLINEは10年後に読み返さないけれど自分のノートに書き記したことはきっと10年たっても読み返すことがある。自分そのものを取り戻す行為が『書く』で、文具はそれを支えてくれる大切なものです」

自分のために、そして相手のために
大切な「書く」ひととき

 

カキモリ

住所:東京都台東区蔵前4-20-12
TEL:03-3864-3898
営業時間:12:00~19:00(平日)、11:00~19:00(土日祝)
定休日:月曜日(祝日の場合は営業)
http://www.kakimori.com/

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