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映画
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招かれる側から招く側へ

2019.11.13

映画祭訪問レポートとなっている本コラムですが、その立場が逆転することが年に一度あります。いつもはゲストとして招かれる側である私が、ホストとして招く側となるその時。私がつとめる映画館が映画祭を開催している時があるのです。

映画館の名を冠した“イメージフォーラム・フェスティバル”。国内で「聞いたことがある!」と即座に分かってくれる人が少数であるということは分かっています(多くの皆さんにこの映画祭の存在を知ってもらうにはどうすればいいのか? これについては日々奮闘中)。しかし、この映画祭は国際的にはかなり名の通った存在なのです。映画館支配人の私が何故度々海外に呼ばれるのか? それはこの映画祭のディレクターを私が務めているからということが理由の一つです。

“イメージフォーラム・フェスティバル”は1987年に始まり今年で33回目を迎えた映画祭。世界各地でつくられた個人映画・実験映画を集めて上映しております。上映本数は例年長編・短編合わせて200本前後。審査員をお呼びして上映作品の中から賞を授与したりもしています。上映以外にトークやシンポジウム、時には映像パフォーマンスなども行います。ちなみに今年のテーマは「ラフ&ワイルド」。粗削りな表現こそが未来を切り開く、そのようなメッセージを掲げています。


アジアからのゲストたちとのシンポジウム

今年の目玉は、アジア各国の上映組織や映画祭のプログラマーを招いて、これからの映像アートはどうなっていくか?ということを考える上映+シンポジウム企画「アジア・エクスペリメンタル・フィルム・フェスティバル・ミーティング」でした(企画名ちょっと長い)。アジアでは政治状況やメディア状況の変化によって、新たな世代の映画作家や映画祭が2000年代以降どんどん生まれました。その新しい動きの中心にいる人たちを招いて、これからの世界と映像の関係の新たな段階について考える、というかなり野心的な企画です。韓国・中国・ベトナム・マレーシア・インドネシア、タイ、フィリピン、シンガポール、そして台湾から、それぞれの地域で注目する活動を行っているキュレーターが当映画祭に集結しました。

映画祭の仕事は、映画の上映だけではなく、作品選定から、字幕付け、広報、ゲストの旅行や宿泊のケア、映画祭カタログやチラシなどの作成、予算管理などなど、数え切れないほどやらなくてはいけないことがあります。これを私たちは、わずか4、5人で日常業務の合間を縫って行なう。非常にハードです。

これからの世界における映画のあり方を考える、という壮大なテーマを掲げたものの、張り切りすぎてゲストが多くなってしまい、実質的にはてんてこ舞い。アルバイトや映画祭ボランティアの人たちの助けを借りながら、何とか乗り切りました。来てもらったゲストには、かつて訪問した映画祭で親切にしてもらった恩を思い出し、その倍以上のホスピタリティで返すぞ!という思いはありましたが、残念ながら上映や運営に精一杯でなかなか手厚い対応というのができず…。


審査員と受賞作家たち

しかし、来日したゲストが「楽しかった」「充実した」「続きをやろう!」と口々に言ってくれ、その言葉に少しほっとしました。映画祭は出会いの場でもあります。我々の映画祭で出会って知り合いになった作家たちやキュレーターもいます。ここでやったことが次の別の何かに繋がっていってくれればそれだけで嬉しいのです。

今回とにかく驚いたのはこのアジアの若いキュレーターたちがとても優秀なこと。全員が自分たちの上映活動は社会を変えていくためのものである、という意識を明確に持っていて、それを言葉で理路整然と、少々ウィットも交えて伝えることができる。楽しいとともに我々も精進しなきゃ、と身の引き締まる思いを、自らで主催する映画祭ですることとなりました。


グランプリ受賞作品『Night Horse』イエルン・バンデルシュトック監督

 イメージフォーラムフェスティバルについてはこちら

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