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秋田でフィルムについて考える

2019.07.31

極寒フィンランドのタンペレから東京に戻りすぐ熱帯フィリピンへ、そしてその翌週には秋田市。寒いところと暑いところを行ったり来たりした今年3月でした。

しかし秋田! 私はまだ2回しか訪れたことがないのですが、これほど豊かな場所だとは。米がうまい、日本酒がうまい、水もうまい。おまけに石油も採れたりするらしい。これは独立国家として成り立つんじゃないか…そんなことを思ってしまうくらいです。

それはさておき、なぜ秋田? それは、秋田市で活動する「秋田8ミリフィルム・アンソロジー」のキックオフ・イベントのため、なのでした。


秋田駅では巨大な秋田犬がお出迎え

いま現在映画館で上映されているのはデジタルのもの。かつては「フィルム」で上映されていました。あまり一般的には知られていないことなのですが、今から10年ほど前、2000年代後半にそれまで主要な上映方式だったフィルムでの映写が、一気にデジタルへと変わったのです。

デジタルはフィルムに比べて、製作・配給コストが安い、環境への負荷が少ない、保管が容易なことなどの利点があり(さらにハリウッド基準のデジタル上映規格が確定したことなどの理由もあったのですが)、この時期映画館へ供給される映画が驚くべきスピードでデジタルのものに変わっていきました。当時デジタル転換のコスト負担に耐えられず廃業した独立系映画館も多数、映画館はメジャー系が経営するシネコンがほとんど、という現在の状況を結果的に作りだしました。


35ミリフィルムのプリント。かつてはこれが映画館でかけられていました。

とにかく映画はデジタル! という流れが一気に進んだのですが、一方でデジタルデータの脆弱性も問題にされるようになってきました。データって、消えますよね。ファミコンのセーブデータ(例えが古くてすみません)なんかで、ええっ!! あんなにレベル上げしたキャラクターが……なんてことが起こり得るわけです。消えてしまったら、その映画はもう存在しない。そういうリスクがデジタルには常につきまといます。

問題はそれだけでなく、メディアの進化ということがあります。例えば古いPCで作ったデータが新しいパソコンで開けなかったということは、みなさんも経験があるのではないでしょうか。データを使えるように保管しておくためには延々と新しいヴァージョンにアップデートして、コピーし続けなくてはいけなかったりします。

そこで、フィルムです。フィルムは物なので、データのように消えて無くなることはありません。適切に保存すれば数百年持つとも言われています(映画の歴史は高々100年ちょっとなので、現在誰も実証できていませんが)。映画フィルムを実際に手にとって見てもらうと、実際に画面(音声も)が、フィルム上に綺麗に並んでいるのが分かります。

私も、初めて幅8ミリの細いテープ状の物体に小さく映像が並んでいるのを見た時は感動しました。そしてそれが映写機に1コマ1コマ投影されて、動く映像になるのです。デジタルデータは実際に触れて中身を見ることはできません。そしてデジタルはすごいスピードで進化していくので、最新の技術がすぐに古びたものになってしまいます。一方、フィルムの技術は、基本的にはこの70年それほど大きく変わっていません。上記で述べたような問題は起こらないのです。

実はフィルムが今、改めて見直されています。デジタルで作られたハリウッド最新作などは、保存のために一旦作品をフィルムに変換しているそうです。

フィルムは物。押入れの奥や、物置からかつて撮影されたフィルムが出てくることがあります。それはもうある意味タイムカプセル。8ミリフィルムは、家庭用として普及していたため、未だにいろいろなところで眠っている可能性があります。

米どころ秋田には酒蔵がいっぱいあります。その酒蔵に放置されていた古い8ミリフィルムを秋田公立美術大学の先生であり映画監督の石山友美さんが発見したことをきっかけに、秋田で眠っている古い8ミリを集めてデジタル化してアーカイブしようという「秋田8ミリフィルム・アンソロジー」が誕生しました

「秋田8ミリフィルム・アンソロジー」facebookページ:https://www.facebook.com/AKITA8mmFilmAnthology/

 

たとえ個人のホーム・ムービーでも、例えば地元のお祭りや街並みが写ってたりすると、民俗史・建築史学・都市景観史的にも大事な資料。そうした公の資料としても貴重になり得る8ミリのフィルムを、捨てないで保存していこうというのが活動の趣旨です。

 

今回、私はその石山さんに呼ばれ『ドーソン・シティ 凍結された時間』(ビル・モリソン監督/2016年)という作品を上映し、解説をしてきました。カナダで70年前にスケートリンクの氷の下に埋められたフィルムが建て替えの時に大量出土し、そこには映画史で失われたとされていた貴重な作品も含まれていた……という出来事についての作品です。

 
旧酒蔵「渡邊幸四郎邸」での上映風景


ジャカルタの古道具屋で買った8ミリフィルム。外箱は『ヘラクレス』のアニメ?

上映は酒蔵の中。そうした特殊な場所で上映するのもすごく楽しかったです。ジャカルタの古道具屋で買った中身の分からない怪しい8ミリフィルムを持って行ったので、そのイベントでかけてみることもしました。買ってから初めて投影してみたのですが、写っていたのはある中華系家族の旅行記。風景の看板から察するに中国のとある都市で撮られたよう。服装から察するに撮影時期は70年代くらいか。中身を知らずにかけてみれば全く知りもしない家族のホーム・ムービーでした。

 *イメージフォーラム上映情報
<伝説の監督 ヤスミン・アフマド没後 10周年記念 特集上映>

2009年に51歳の若さでなくなったヤスミン・アフマド監督。没後10周年記念の特集上映をシアター・イメージフォーラムにて開催します。 小津安二郎とダグラス・サークに影響を受け、一番好きな映画は『男はつらいよ』だと語っていたヤスミン監督の、優しく、ユーモアのある世界をお楽しみください。

2019年7月20日(土)〜8月23日(金)

特設サイトはこちら!
moviola.jp/yasmin10years

上映作品:

『ラブン』『細い目』『グブラ』『ムクシン』『ムアラフ−改心』『タレンタイム〜優しい歌』+『15マレーシア』

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