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日本刀
16

世界一の一振り

2020.02.13

「都会の空き地は上にある。」

夕食どき、なんとなく流していたテレビからそんなキャッチフレーズが聞こえてきた。あれは確か、建設会社のCMだったように思う。

横に広げられる土地がない都心では、街が上へ上へと伸びていく。都会と聞いて思い浮かぶのは、大きなビルばかりがところ狭しと立ち並ぶ街並みだ。”住むなら長閑な一軒家派”な私は都心の街並みにあまり興味はないのだけれど、そのCMを見たときに、そういえばちょっと前に渋谷ではセルリアンタワーを抜いて一番高いビルが出来たなあなんて、そんなことを思い出した。去年たくさんの人が話題に出していたからだ。

 

一番高いとか一番大きいとか「一番」スケールが大きなものは注目されるものだ。実際、海外旅行中、大きな建物を見上げている横から「この建物が国の中で一番大きいんですよ」なんて言われると、それまでなんの気なしに見上げていた建物のてっぺんが、急に光っているようなちょっと大げさなものに見えてしまう。そうして、ははぁー凄いですね、と唸ったような経験は何度もある。私は割とそういうことに対して脊髄反射で反応してしまうというか、よく言えば素直というか、一番、という称号を聞いた途端に「ある大きな建物」が「なんだか凄い建物」という認識に変わってしまう。まあでも周りにいる観光客も似たりよったりな反応なので、大抵の人はそういうものだと勝手に思っている。一番という響きはこちらを無抵抗にさせる輝きがある。

 

どんなジャンルにも一番ビッグスケールなものはあるものだ。一番高い建物、一番広い湖、一番大きな猫なんていうのもいるだろう。そして勿論、刀剣の世界にも一番大きな日本刀が存在する。これが結構インパクトのある一振りなので、今回はこの刀について紹介させてほしい。そして私のように素直な皆さんには、ははぁー凄いですね、と唸ってもらいたい。

 

世界一大きな日本刀としてその名を馳せるのは、山口県下松市の花岡八幡宮が所蔵する「破邪の御太刀」だ。

 

破邪の御太刀
画像出典@刀剣ワールド
参照ページ : https://www.touken-world.jp/tips/17624/ 

 

その刃長は実に約345.5 cm。345.5 cmといえば、畳(関東地方で一般的に使われているものとする)の寸法でちょうど2畳を縦に並べたくらいの長さがある。更に、茎(刃がなく、柄となる部分)を含めた全体の長さは約465.5 cmもあり、建物の高さで言えば1階の天井を突き破って2階に到達してしまうほどの大きさだ。

そしてこの大太刀、なんとその重量は75 kg。日本人の成人男性の平均体重が67Kg前後らしいのでそれより10Kg近く重い。花岡八幡宮の大祭では10人がかりで運び出されていた。

破邪の御太刀は延寿国村27代国綱が鍛えたもので、作刀に要した砂鉄は約300貫(約1125 kg)。その刀身があまりにも長大だったため、高温で熱した鉄を水に入れ急激に冷やす”焼入れ“という作業は川をせき止めて行われたともいわれる。

とにかく、どこをとっても聞いて驚け、見て笑えと言いたくなるほどにビッグスケールな大太刀である。


画像協力 下松市産業観光課

 この刀が花岡八幡宮に奉納されたのは幕末の1859年。

ここから先は時代のうねりの中で刀のあり方が激変していく時代だった。10年後には戊辰戦争にて武器の近代化をはかった薩摩・長州藩が旧幕府軍に勝利し、17年の後には廃刀令が出されることになる。実践刀としての刀の役目が終わっていく中、美術品として、または神社などへの「奉納刀」として刀は存在し続けた。破邪の大太刀も、尊皇攘夷思想が盛んだった長州で、邪を払い安寧をもたらすようにと祈念して花岡八幡宮の氏子が国綱に鍛刀を依頼したという。世界一の大太刀と言われるこの刀が放つ武威と霊験は、平和への祈りの象徴だったのだ。

 

 

さて、一番大きな日本刀の話はここまでにして、少しだけ最初の話に戻らせてほしい。

都心のビル群について考えた時、渋谷で一番高いスクランブルスクエアもそうだが、池袋一高いビル、サンシャイン60も同時に思い浮かべた。スクランブルスクエアは周りで話題に上がっていたからだが、サンシャイン60は先日サンシャインシティに足を運んだからという理由だ。

ここ数年の勢いが目覚ましい刀剣ブーム。その火付け役であるオンラインゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMMゲームズ/Nitroplus)のサービス開始5周年を記念して、全てのメディアミックスが一堂に会する「本丸博」がこの池袋一ビッグな建物で開催されたのだ。

2017年にも同様の展示会があったのだが、3年前より更に切れ味を増した催しとなっていた。長年刀剣乱舞にお世話になっている身からすると、本当に最高だった。展示物を静かに見て回っているだけなのに、とてつもなくカロリーを消費した気がするし、なんなら体感で2 kgくらい痩せた気がする…。ここでは詳細には触れないが、本物の刀剣を博物館から借りてきて展示していたことにも運営の本気度がうかがえる、素晴らしい催しだった。

今回は一番大きな刀の話をしたけれど、もう一つ言いたかったのは令和2年が始まって数十日の中で一番印象的だった出来事について。そんなわたくし事でした。

刀剣乱舞5周年おめでとうございます。

 

 

画像協力

 

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