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映画
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南の楽園バリの、めちゃくちゃやる気の映画祭

2020.02.20

プサン映画祭に参加したその足でソウルに向かい、ジャカルタを経由でバリ島・デンパサールへとやってきました。ミニキノ ・フィルム・ウィークという映画祭に参加するためです。公共交通が発達しておらず、首都以外ではほとんど映画をスクリーンで観る機会がないインドネシアにおいて、この映画祭はバリ島など国内各地に映画祭そのものを送りこみます。農村や山岳地帯も含めたいろいろな地域にスクリーンとプロジェクターを持ち込んでその場で映画上映をするのです。このスタイルで今年で5回目を迎えます。


ミニキノ・フィルム・ウィークの野外上映はこんな感じに設営。暗くなったら上映開始。

独裁政権による中央からの情報統制が長く続いたインドネシアでは、国の体制が変わって以降、個人としての表現や地域独自の文化を改めて獲得しなおし、それを広げていこうというマインドのもと、様々な文化活動が行われています。それは映画においても変わりません。

インドネシアは大小1万以上の島々が5000キロ以上にわたって点在し、一つの国を形成しているのですが、言語や宗教の文化が地域によってかなり多様。東京都の倍ちょっとの広さがあるというバリ島も、その島内で気候も含んだ地域性がかなり色濃くあるということを訪れてみて初めて知りました。インドネシアの魅力は豊かな自然だけでなく、そのような多様な文化と歴史。例えばムスリム国家とみなされているインドネシアですが、バリ島は独自のヒンドゥー教が定着している、その宗教の多元性。あるいはナツメグやクローブなどのインドネシア原産のスパイスにまつわる、暗黒の歴史。ここに書き切ることができないくらい面白い話が沢山あります。


バリ島名物、バビ・グリン。豚肉のグリルはムスリム文化の影響が薄いバリ島ならではのもの。とても美味しい。

さて、ミニキノ ・フィルム・ウィークですが、先に述べたように島内各地で同時多発的に上映を行うスタイルなのですが、その背景には映画を通して地域コミュニティを生成していくという考え方があるそうです。例えば機材の設営から上映までを、地域の住民と共同で行うことなどにその考えは見て取れます。

6箇所ほどの地域で同時に上映を行っていたりして、映画祭を運営する側からすれば、よくもこんな大変なことにチャレンジするなあ…、と驚かずにはいられません。他にも、お題発表から48時間で映画を作るコンペティションがあったり、子供と一緒に外国映画にインドネシア語吹き替えをするワークショップをやったり、とにかく発想に満ち満ちていて刺激を受けます。

それはこの映画祭のプログラム・ディレクター、フランシスカ・プリハーディさんが建築家であるということも関係しているのかなとも思いました。彼らの活動を見ていると、映画祭を一つの歴史・文化のためのプラットフォームとして、社会という構造の中に位置付けているように感じます。

自分が建築家ということを最大限生かして、映画祭に来る海外ゲストのための宿泊用に自分が設計したホテルに泊めたり、建築家ネットワークで繋がっている場所に協力してもらい、そこにゲスト宿泊を頼んだり、上映やセミナーを開催したりもすることにも驚きました。


宿泊施設はプール付きでリゾート感覚。

私は今年で2回目の参加なのですが、1年ぶりに来てみてさらに驚いたのは、映画祭が自らの映画館までDIYで建ててしまっていたこと。昨年来た時にそんな野望を語っていたような…。その行動力と実行力に驚嘆させられました。この映画館は宿泊設備も付設。映画を観てそのまま泊まれるという、なんだか面白いことに。なにやらバリの新たな観光スポットになってもおかしくないのでは無いか…そんな気さえしてきます。


映画祭のメイン会場映画化館が完成し喜ぶ映画祭ディレクター、フランシスカ・プリハーディさん。

映画祭の内容も、あくまで個人の表現である「短編映画」に主眼を置いて、しっかり若手の映画作家を支援する、その徹底した姿勢に尊敬の念が湧きます。どうしても大きな資本が必要になる長編映画は、資金の回収を視野に入れた映画づくりが必要になってしまいますが、そうした商業的制約から比較的自由な短編映画は、果敢な表現ができ、若い映画作家にとってとても大事なのです。

こうして説明すると、この映画祭、さぞみんな汗水たらしてヒイヒイやっているのかと思われるかもしれませんが、実際はとても楽しそう。ボランティアも若い人が多く、毎年この映画祭のボランティアをするために島外からやって来る人もいて、運営側もとても充実感を持ってやっているのが分かるととてもいい映画祭でした。

充実した映画祭を終えて、そのまま山形ドキュメンタリー映画祭に向かおうとしたところ、悪天候のため飛行機が飛ばず足止めをくらい、バリで思わず2日ほど多く滞在することに。山形映画祭は2年に一度の「ドキュメンタリー」に主眼を置いた映画祭で、近年とても充実しているので、参加したかったのですが、残念ながらそれは再来年以降に持ち越しになってしまいました。

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