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音楽
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Our Native Daughters

2019.05.08

Our Native Daughters  

 今年のアカデミー賞で作品賞と助演男優賞受賞の「グリーン・ブック」、助演女優賞受賞の「ビール・ストリートの恋人たち」、そして脚色賞受賞の「ブラック・クランズマン」はそれぞれアメリカの人種問題をテーマとしたものでした。どれも60年代から70年代の時期を描いた作品ですが、こういう映画が今でも話題になるのは、やはり現在でも人種間の問題が変わらず続いている証拠です。

 数年、主にフォーク・ミュージックの世界でアフリカン・アメリカンの若い女性リアノン・ギデンズはとても面白い活動をしています。フォークというとまず白人の音楽というイメージですが、メンバーが全員黒人のキャロライナ・チョコレート・ドロップスというグループでデビューした彼女は、その後優れたソロ・アルバムでフォーク以外の幅広い曲を歌うようになりました。

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Rhiannon Giddensさん(@rhiannongiddens)がシェアした投稿 - 2019年 2月月23日午前7時31分PST

  そのリアノンの最新プロジェクトは「Songs Of Our Native Daughters」という企画アルバムです。参加者は彼女の他3人のアフリカン・アメリカンの女性、アミシスト・キア、レイラ・マッカラ、アリスン・ラッセルです。全員が作曲もし、歌も歌い、複数の楽器を演奏しますが、みんなが弾く楽器はバンジョーです。

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Rhiannon Giddensさん(@rhiannongiddens)がシェアした投稿 - 2019年 2月月21日午後3時33分PST

 バンジョーという楽器は19世紀半ばから、ミンストレル・ショウという大衆芸能で人気が出たのです。このミンストレル・ショウは南部の黒人奴隷たちの生活を歌と踊りでパロディにしたような娯楽で、顔を黒く塗った白人が大げさな身振り手振りで黒人を演じたものです。ややショッキングなことに、ぼくが子供だった頃のイギリスのテレビではまだミンストレル・ショウが存在していましたが、さすがに今は差別的なイメージになって、過去のものとなっています。

 とにかく、アフリカン・アメリカンにとってバンジョーはそんな娯楽と切り離せないイメージの楽器なので、圧倒的に否定的に見られて、長いこと黒人のミュージシャンが演奏することはほとんどなかったのです。しかし、バンジョーのルーツは西アフリカにあり、奴隷としてアメリカに運ばれた人たちが使っていたものから段々今の形に変わって行きました。

 リアノン・ギデンズは早くからキャロライナ・チョコレート・ドロップスでいちばん古いタイプのバンジョーを弾いていました。音は素朴で、フレットもないので、弾きようによってはアフリカの楽器のようにも聞こえます。そして今回の「Songs Of Our Native Daughters」では4人の黒人女性たちがそれぞれ違ったタイプのバンジョーを演奏し、奴隷時代、あるいはその後のひどい差別の時代の様子を描いた歌を歌うことで、多くの人がついつい無視してしまう過去にもう一度目を向けています。中には辛い内容の曲もありますが、4人の歌と演奏は見事で、目下愛聴盤です。

 

 

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