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珈琲
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角の駄菓子屋(的コーヒー店)

2019.06.20

「令和? いえいえ、この辺はまだ昭和のままなんですよ…」

これは、夕暮れ時にお客さんとよくする会話。

清澄白河の各店で配布されている近隣の見所を紹介する「ROUTE」というフリーマップにおけるARiSEの紹介には「小学生も立ち寄る」というコーヒー店としては何のウリにもならない謎の枕詞が。

ROUTEを手にしたお客さんに時々訊かれるので、この由来を少々お話ししましょう。平野アライズことARiSE COFFEE ROASTERSは明治小学校、深川第二中学校、月かげ幼稚園の通学・通園路に位置します。

事の発端は5年以上前。

夕方焙煎をしていて、クーラーで焙煎豆の冷却中、ナチュラルプロセスの銘柄に比較的多く混入しているクェーカーと呼ばれる通称「死に豆」をハンドピックしていた。 すると、人懐っこい小学校1年生の男の子が「何やってんの?」と閉店後の店内に入って来た。
「コーヒーに入ると味が悪くなる豆を探して取り除いてるんだよ」と大真面目に、職業教育的にも100点の回答をしたが、それに続く言葉は、
「それ、食えるの?」

うーん、さすが小学生。

「まぁ、旨いとは思わないけど食えることは食えるよ」
「ちょうだい、ちょうだい!!」
一粒渡すとさっそくガリッ!
「うめーじゃん。ナッツみたい」
今になって思えばあの時がこの土着的な伝統の誕生した瞬間だった。

翌日の夕方、今度は昨日の少年を含まない4人組が店の前で整列、
「「「「シニマメくださ~~い!」」」」

「死に豆だって…ぷぷぷ」と内心笑いつつ、
「ほらよ、一日一粒だからな」と渡した際「ありがとう」が言えないガキには
「おい、人に物をもらったら何か言うことないのか?」
「お? あ!? ありがとう!」
「よし、それを忘れるなよ。大事な事だからな」

ドアを開けたら閉める、他のお客さんの邪魔をしない、混んでいる時は遠慮する、などと併せてプチ教育。
このやりとり、実はかなり多くのお客さんたちが目の当たりにしてる平野アライズの日常風景であります。当然のようにこれを書いている当日も。


下校時に捕まえたかたつむりやクラスで飼育していたザリガニを見せに来る小学生たち。

売ってるのは砂糖もミルクも無いハードコアなスペシャルティコーヒーではありますが、その店の佇まいは我ながら駄菓子屋のようであると自覚もしております。
自転車で通りがかる親御さんから「息子(娘)がいつもすいません!」と声をかけられることが多々あるものの、正直言えば「いっぱいいすぎて誰があなたの子どもか判りません!」っていうのが正直なところだったりもします。

ちなみに、小学生だけでなくお母さんに連れられて帰宅する幼稚園児も立ち寄る。これを書いてくれた少女は、一時期毎日幼稚園で起こった出来事を話して帰るのが日課だった。そんな彼女も今では小学生。歳取る訳だよ、おれが。

せっかくなので、この機会に振り返っておきたい穏やかなりし日々を、お母様(大好きな傘作家)に使用許諾をいただいたとあるお嬢さんの懐かしい画像を交えながら少々。放課後、彼女が平野アライズで宿題をやっていたあの日々が思い出されます。


平日の暇な時にはシャボン玉で遊んだり。

 


ある日見せてくれた工作の授業で作った作品。この色使いにもうCoci la elleの血脈が。

 


ご家族やお客さんを巻き込んで縄跳び。

この画像の日々から時は経っても、毎日何かしら、スケボー教えてくれ、ゾイドワイルドの新製品を買ったか、ドミネーター触らせてくれ、駅でポスターを見たがあんたって有名なのか、何でそんな髪の毛なんだ、と帰宅途中の小僧どもに訊かれます。
「大人なのに格好が派手だが大丈夫か?」
と保守的な事を言うガキがいたので 「本当に悪い奴らはこんな格好はしてないんだ。本当に悪い奴らは大体スーツを着ているものだからな」
と時には世の真理を教えることも。
またとある日、
「先生は口だけで店に行かないでしょ! と児童に言われたの。私は嘘は言わないわ。見てなさい、今度報告するから。と言っておいたわ」と言って、来てくれた女性が明治小学校の副校長で驚いた事もあった。

更に驚いたのが、その副校長がコーヒーマニアを自称しており、本当に詳しい。
ご自宅には器具も多数、ドーナツドリッパーまで保有し、豆に関しては
「私、コーヒーはナチュラル(サンドライ)だけあればいいと思ってるの」
「今日ナチュラルは、何種類置いてるかしら?」
と言ってドミニカワイニーと他2種のナチュラル豆をお買い上げいただきました。
(明治小学校の児童諸君、この先生スゲーぞ)

その後、その明治小学校の課外授業で児童と担任、保護者が平野アライズに来る機会なども。後日、読ませてもらった当日参加した児童全員の感想が書かれたレポートの中で特に胸に響いた言葉で今回のコラムを締めましょう。

「やきゅうせんしゅになれなかったら、コーヒーやになってもいいかなとおもいました」

ゆりかごから墓場まで、暮らしを見つめるアライズコーヒーの提供でお送りしました。

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