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tender コイヌマミホさん 編集後記

2022.05.21

 早朝、雨上がりの表参道。
お店の扉をあけると、じめじめとした風を吹き飛ばすような明るい声がひびいていた。 
前日お店でフリマをしていたらしく、そのワクワクとした空気の名残がある店内。
「このTシャツ、シルクスクリーンで刷ったんすよ。100枚も!」
「このビールサーバーみたいなのは缶バッジを作る機械で、これも夜通しひたすら作って。」
楽しい思い出をたくさん話してくださり、一瞬にして空気があたたかくなる。編集者としての経験が浅いわたしにとってサロンに初めて踏み入れる足はまだ少し重たいけれど、その緊張していた気持ちもゆっくりとやわらいでいくのを感じた。

 今日のモデルさんは、ギャラリーの受付で働く女の子。髪の形へのこだわりはあまりないけれど、クセが気になるので普段のお手入れが楽な髪型にしたい。奇抜すぎたり今っぽすぎるのも少し違う。
 それに対するコイヌマさんの答えは「シンプルなショートスタイル」だった。
 普段のカウンセリングでは、「今このお客さまにぴったりな髪型はなんだろう」と探りながら切り進めていくので、最初の段階ではあまり決めすぎない。その「少しずつ探る」が彼女のお客さまへの歩み寄り方になっている。お客さまの空気感、どんな服装をしているのか、今はどんな気分だろう?と、少しずつパーソナルなことを引き出したり。そして何より一番大切なことはその人の「嫌だなと思うこと」を見つけることだそう。これ以上は切るのは嫌だ、のラインを知っていったりする。そうやって、少しずつ「今このお客さまにぴったりな髪」ができあがってくる。

 今日のモデルさんとも施術をしながら、ずっと何やら楽しそうに話をしている。趣味の話や最近ハマっていること、今日の予定だとか。その中で、「それ初めて知った!メモしておかないと!」と新しく知ったお客さまの情報を欠かさずメモする姿が印象的だった。そのメモ帳の厚さがお客さまと歩み寄ってきたストーリーの深さを物語っている。
 お客さまと話すときはぜったいに嘘をついたり取り繕ったりせず、自分のことを知ってもらう。美容や薬品の知識をしっかり学び、それをお客さまにも理解してもらえるように伝えること。それを意識していると言っていたので、その働きかけできっと相手との信頼や共感が生まれてくる。お客さまの髪のコンプレックスも一緒に解決していく。少しずつ心と言葉と毛先の変化で歩み寄っていくんだなと思った
 そしてコイヌマさんはつねに「Why?」が止まらないタイプなので、これまで何度も立ち止まっては納得して前に進んできた。純粋な向上心や好奇心は、自らを大変な道に進ませたりもする。それでも多くの良い出会いや発見があったからこそ、その経験が自分を奮い立たせる力となっている。自分の中だけでは留まらず、まわりの人への純粋な興味や関心、そして「今ぴったりな髪型」への探究心につながってくるんだと思う。

 今日のモデルさんがショートになった姿を見て、そっちの方がしっくりくる!とスタッフのみなさんも口々に。髪が短くカットされていくにつれてモデルさんの表情が明るくなっていく様子、サロンの空気までもがさらにやわらかくなっていくのを肌で感じて、私が施術されているかのようなワクワクを感じたりもした。ばっさり切ったり、雰囲気を一新するような施術は、今でもとても緊張すると話していたけれど、純粋に「人が好き」で「髪が好き」なコイヌマさんの気持ちは、遠回りしても相手に寄り添って届いていくのだと思う。

 

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