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BEAUTY AWAKE

TRACE 木村良成/YOSHINARI KIMURA

STYLIST’S VIEW

 サラリーマンから転職をして理容師になった僕には「美容師の師匠」はいません。理容室では7年経験を積みました。サラリーマンを辞めたのは、家と会社を往復して仕事で利益を生み、昇進していく人生が、当時の僕にはステキだと思えなかったからです。そして、自分のこの手でずっと食べていける仕事、自分しか生み出せないことを仕事にできる方法は何だろう?と模索して、理容師になり、その後、美容師になりました。
限りなく自由であり、責任がある
それが僕の考える美容師です
 理系の大学を出たのにもかかわらず、ヘアデザインの道へ大きく舵を切るために、僕は昼間に専門学校に通い、夜はガソリンスタンドでバイトをして学費を稼ぎました。
 当時の僕は、女性に苦手意識がありました。そこで最初は、男性客しか来ない理容室を選びました。
 ただ、理容室で日々男性のお客さまを相手にしていく中で、男性の髪型よりも女性の髪型により魅力を感じるようになっていったのです。さらには、どんなにかっこいいデザインをつくっても、理容代金は当時、美容代金より安いところが多く、同じように誠心誠意デザインを提供しているのに、対価が異なるところにも疑問を感じるようになっていました。そこでオーナーに掛け合って、当時、所属していた理容室から、美容室を出店してもらったのです。経営できる売り上げ、利益、人材を育てることなどを含み、「2年で結果を出す」と直談判した上での出店でした。
 理容師として理容室で働きながら、通信で美容師の資格を取得しました。そしてさまざまな美容師の講習会に参加しました。有名美容師が講師を務める技術講習会、カリスマと呼ばれる人が行うサロン運営のセミナー。そこは、宝の山でした。でも参加している美容師さんたちは、そのすごさがわからないのか、せっかく出席しているのに、質問もしなければ、食い入るように見る人も多くありませんでした。僕には、それが逆にチャンスだと感じました。理容室と違って、女性を対象とした美容室は、扱う髪の長さも幅広く、またやわらかさやカールなど、質感での表現もでき、デザインの醍醐味が味わえるのに、それを自覚していない人たち。理容室で働いていた自分でも勝ち目はあると思ったのです。
 そして、有言実行。2年でオーナーに約束した結果を出して、独立し、大阪の郊外の高槻に「TRACE (トレース)」という名のサロンを12年前にオープンさせました。
 トレースは、さまざまな分野で使われている言葉で、たとえば、登山用語では「踏み跡」や「踏み跡をたどること」という意味があります。このほかにも、図面などを敷き写すこともトレースといいます。すでにあるものをなぞること。またはなぞるべき痕跡のこと。その痕跡の意味で名づけました。
 なぜ「痕跡」という店の名前に思いを託したのか。
 お客さまへの思いで築き上げたヘアデザインは、つくり上げたそばから、変形し、失われていってしまいます。つまり、つくっては失う美しさがヘアデザインにはあります。でも僕は、時代が変わっても残るもの、残すものとして、店という空間をつくりたいと思い始めたのです。
 高槻という大阪でも郊外の場所を選んだのは、僕のコンプレックスがその理由の根底にあります。メジャーではないお店、有名サロンに所属しているわけでもない僕。美容の聖地の青山でもない。でも、それで終わりではおもしろくない。本当にいいお店であれば郊外であってもいいはずだ、と。それを証明したかったのです。
 髪を切ることでヘアデザインをする。店をつくることで空間をデザインする。そして、そこに訪れた人々が街にいることで、店があることで、街もデザインする。
 お客さまの拘束時間を短くするために、できるだけ技術を早く提供することはもちろん毎日の課題ですが、TRACEでは、お店でゆっくりしていってくださる方が多いです(笑)。そんな人生の大切な時間を私たちに預けてくださっているお客さまに、髪を施術している時間だけでなく、滞在しているそのほかの時間も豊かだと感じてもらいたい。
 洗練されたモダニズム建築には、装飾的な派手さはありません。しかし、そこで働き、暮らす人々が主役となるために設計された人間本位の建築であると僕は、感じています。今はまだ夢の途中ですが、いずれ、そのような近代モダニズム建築のあり方のような、「建物としてのTRACE」も残せたら、と思っています。
 今日のモデルさんは19歳。大学で製菓を専攻している女性です。肌が白くて美しく、首が長くてキレイなラインなのに、そのよさを隠してしまっているのがもったいないと思いました。そこで、キレイな部分を隠さず、空気感をプラスするため、カールがはっきり出る、しっかりウエーブのあるパーマをかけて、手ざわりもやわらかいスタイルにしました。
 今回と同様、ふだんも僕は、前髪から切ることが多いです。それは、お客さまに早く安心感を与えたいから。お客さまのいちばん気になるところから切っていきます。そして、あえて切りこぼしがある感じにするのが僕の今の好きなテイストです。上手であればあるほど、おもしろみがなくなってくるように感じるのです。子どもの絵と天才画家が描いた絵。どちらも素晴らしいと思ったことはありませんか。ただ、プロと呼ばれる人々が描いた絵は、大人向けになりすぎていて、きちんとしていて、心が躍らないこともある。だから、大人が必死につくったものを小さい子どもが崩したような、そんないたずら心を感じさせる、ユーモアが残っているスタイルに惹かれるのです。

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AFTER THE BEAUTY AWAKE

 僕が本当に人生をかけてやりたいことは、美容室をビジネスとして成功させることではありません。本当にやりたいことは、自立し、自由でいること。本当の自立とは、すべての責任を自分でとれることだと僕は解釈しています。そしてその責任をまっとうするには、逃げないこと。

 美容師は限りなく自由であると同時に、とてつもなく責任がある。美容師の責任は、何に対して負うべきか? その答えは、出会ったお客さまの生活全般です。彼氏とケンカをしたり、結婚をしたり、就職したり、仕事を辞めたり。その喜びや悲しみ、その広さと深さを左右する、それらは、すべてヘアスタイルにひもつけて考えることができるから。

 時代の移り変わりとともに常に変化するヘアデザイン。時代が変わっても残る本質。日々、お客さまとの出会いの貴重な時間の積み重ねの中で、僕は新しさとおもしろさを追求しています。

木村良成
TRACE  Director

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